命より大切なもの

命よりも大切なもの

  まるでその部屋はソドムとゴモラのようで、秩序などなく、そして深い哀しみに閉ざされていた。
多くの人は感情を失い、死を美化し、人に死を求めた。
しかし彼らは挙って口ずさむ。
「命よりも大切なものはない。」と。
命より大切なものがないのに、彼らは命を弄び陵辱する。
そして、壊す。
まるで子供が新しい玩具を買ってもらったときのように喜び、胸を躍らせながら命を壊す。
「人殺し」をしたとは全く思っていない。
なぜ、そう思わないのだ?狂っているからだ。ソドムのように陵辱し、ゴモラのように背徳を重ねても、
それに気づかない。
自分の魂は清いと思っている。
もともと罪を持って、愛を持って生まれてきたことを忘れて。
彼らは罪に罪を重ね、それを楽しんでいる。
もうやめてくれ。私はそんなものを見せ付けられるために生まれてきたわけではない。
気づいてくれ。
人間として生まれたことの本当の喜び。
人間として生まれたことの罪の重さを。
生きている限り罪から避けてとおることは出来ない。
ならばせめて、
罪人であることを知れ。
身代わりになったものがいること。生きていられる理由を。

人間は自分を神だと思いたいようだ。
では、なんと不完全なことか。
自分の潜在的に持ったものにすら気づかないなど、不完全であるまえに未完成品ですらない。
そんな不完全な神、仏どもよ。同じ罪人の私が言おう。
「命より大切なものはない」と言いながらにして、命を粗末にしているお前達の罪はあまりに大きい。
生まれ持った罪よりも、人間として今まで犯さざる得なかった罪よりも、永遠の死を持って裁かれるほどにお前達の罪は大きすぎる。

死の代価を払ってもその罪は拭いきれないであろう。
死後の裁きを持ってしてもその罪は拭いきれない。
分子から抹消され、永遠に生をうけることはない。
裁きを行うのは私ではない。
英知をはるかに超えたものである。
そのときに気づけば幸せである。
自分の罪の重さを。

最後にそれに気づくことを祈るばかりである。
傲岸不遜なカミと、仏達よ。
命の簒奪者である、カミと仏達よ。




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